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あらすじ
形ばかりの正妻と知りながら、恋焦がれていた王国騎士団長と結婚したラシェル。
後継を設けるためだけの愛のない新婚生活を経て、ようやく授かった息子を必死に育てるものの、とある事件をきっかけに彼女は命を落としてしまう。
しかし、目を覚ますと、結婚式の日に時間が巻き戻っていた!
なぜ二度目の人生を送ることになったのか、やり直しの意義とは何かを考えるラシェル。
――今度こそ、本当に大切にするべきもの、愛するわが子を守ってみせる。そう、あなたの愛など要りません!
決心した彼女は過ちを繰り返さないよう、新しい幸せな人生に向かって歩みはじめて……。
感想
それぞれの“愛”と“人生”について描かれた深いストーリーでした。
分かっていたことだとはいえ、初恋の夫から愛されずに(夫には愛人がいる)心が壊れてしまったラシェル。
自分のために息子であるランスロットに虐待まがいのことをしていましたが、最期に気付くのです。
本当に大切なのはランスロットだということに。
やり直しが始まり、同じ過ちを繰り返さないようランスロットを必死で幸せにしようとする姿には心を打たれました(子供を愛してるからこその苦悩にも)。
そして、またランスロットの母を想う気持ちも。
自分がいなくなったとしても、母の幸せを願い時を戻すことを望んだランスロット…親子の絆に感動して涙でした。
これでヘンドリックスが分かりやすくラシェルを愛して…という展開がよくある「やり直しもの」だと思うんですが
このヘンドリックスがかなり複雑で。もう本当に読んでいるこちらが複雑な気持ちになるというか。
確かにヘンドリックスがラシェルにしたことは許されることではないし、愛人への対応にも疑問を感じますが、ヘンドリックスは可哀想なほど心が未熟なのです。
愛しているのはラシェルだということに気付くこともできず、それを誰かに教えてもらうこともなかった。
最期の彼のセリフには息が止まるような気持ちになりました(もう心が揺さぶられることはないという安堵感だったんだろうか)。
ハッピーエンドなはずなのに、手放しでハッピーだとは言えない複雑な気持ち(できるなら次の人生ではヘンドリックスにも幸せになってほしい)。
ただし、いろいろと考えさせられる深いストーリーであることは間違いありません。