あらすじ
子どもの小学校入学を機に、とある郊外の住宅地に引っ越してきた平川家。
1児の母である平川里奈は、近くに住むママ友や町内会の人たちと良好な関係を築き、おだやかな生活を送っていた。
そんなある日、公園で出会った見知らぬママとの口論をきっかけに、植木の破壊や落書きなど、「誰か」からの嫌がらせが里奈の平穏な日常を揺るがしていく。
口論したママを犯人だと疑う里奈は、決定的な証拠をつかむために奔走するものの、事態は思わぬ方向へと転んでいき―――。
悪質すぎる嫌がらせの犯人は誰? 閑静な住宅地でうずまく、ミニマルな人間関係の異質さを描いたサスペンスセミフィクション。
感想
犯人は「口論をした虐待疑惑のある見知らぬママ」と決めつけたうえで、悪質な嫌がらせの証拠を見つけようと、探偵みたいなことをした里奈。
そのせいで、街中に噂が広まり「口論をした虐待疑惑のある見知らぬママ」は、精神的にどんどん追い詰められることに。ただでさえ、追い詰められていたのに、里奈の正義の被害者になってしまった。
一番最初に里奈の家の玄関に「出テイケ」と書いたのは、たぶん「口論をした虐待疑惑のある見知らぬママ」だったと思うけど(家出するときに持っていたのは使用済み?)、他の悪質な嫌がらせの犯人は別の人。
この犯人もまた「自分の正義で人を傷つけた人」で、この犯人にたどり着くまでが、刑事もののドラマみたいでした。
そして、幸せそうに見える家庭でも、実は人には言えない事情を抱えていることもあって、見える部分だけで、その人のことを知った気になってはいけないんだなって。
それが特によく分かるのが、ラストの「ガチャ…ジジジ…プツ」というシーンかな。最初はこれが何なのか分からなくて、読み直したらまさかの伏線があった!!事件が解決したのに、「異質な人間関係」の不穏な空気が残っているという気持ち悪さ。
あとがきには「あなたの正義が誰かを傷つけていないか?」という問いだと書かれていましたが、「人ってこわい!!」というあのシーンに全部もってかれました。