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あらすじ
王立学園に聖女見習いの田舎男爵の庶子アイニ・ミッコラがやってきて半年。
今学園は混乱の極みにあった。貴族子息である男子生徒たちはアイニの無邪気で天然な可愛らしさに翻弄され、女子生徒たちはアイニの貴族マナーを無視した振る舞いに困惑し憤りを覚えていたからである。
そんな中、巷で流行の物語になぞらえて「悪役令嬢」と呼ばれることになった三人の令嬢たちがいた。
王太子の婚約者で清廉な侯爵令嬢セラフィーナ。商売で裕福な子爵家の気高き令嬢サンドラ。現宰相の侯爵家の聡明な令嬢ベルナルデッタ。
いつしか学園内に不穏な空気が漂い始めた時、彼女たちがついに立ち上がる!アイニの間違いを正し、古めかしい因習に囚われた貴族社会を変えるために。
これは三人の「悪役令嬢」たちと聖女見習いが繰り広げる、女たちの生き様をかけた戦いの記録である――。
感想
無邪気で可愛らしい聖女見習いが入学したことで、流行の物語に準えて『悪役令嬢』と呼ばれることとなった3人の令嬢たち。
その一人である「王太子の婚約者セラフィーナ」と「憧れの王太子とお近づきになった(と思っている)聖女見習アイニ」の直接対決から物語がスタートします。
本来なら、婚約者である王太子が他の女と親しくしていたら、嫉妬したり傷つく描写があるものだけど、この作品は婚約者であるセラフィーナの感情描写が一切なかった。
その理由こそ、この作品の面白さで、ギャーギャー言う聖女見習アイニへのセラフィーナの返答には度肝を抜かれました。自分の立場を理解しているというか、気高いというか。本当にかっこよくて、そもそもアイニに同じ舞台に立たせないという。
「七年に及ぶ信頼関係が、恋愛感情なとに劣るわけがない」
からの
「愛と言うのならば、わたくしはこの国を愛しております。王妃とは国の母です。それ以上に、何が必要なのですか。」(とはいえ、セラフィーナと王太子は仲良し)
そんなセラフィーナの気高さに感化されたサンドラが、自分のやるべきことを見出し、ベルナルデッタが俯くのをやめたというのもまた素敵でした。そして聖女見習アイニもセラフィーナの生き様によって成長。
サンドラ視点のストーリーもベルナルデッタ視点のストーリーも本当にかっこよくて、特に、おどおどしていた天才ベルナルデッタが、能力を存分に発揮するところが好きです。
ざまぁはサンドラの元婚約者くらいだったけど、ざまぁではなくそれぞれが成長するエンドも元気がもらえていいなと思いました。