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あらすじ
魔道具調整師のルシアナには、いずれ結婚すると信じている恋人がいた。
しかし、ある日突然彼は別れの言葉を告げてくる。どうやら彼は、すでに別の結婚相手を決めたらしい……
最愛の人と結ばれないと知ったルシアナは、誰にも告げずに街から姿を消すことを決意する。
「全てを捨てて、私は本当の幸せを探します!」
そうして彼女は新しい人生の一歩を踏み出した。それから十年の時を経て、住み慣れた田舎町で再会したのは、何やら訳アリな様子の彼。
さらに予想出来ない人物までもがやって来る。運命の歯車は再び動き出したようで――
感想
人間の甘え、弱さ、逞しさ、優しさが各登場人物の視点から描かれていて、時折涙が溢れるほど感情移入してしまった。
アザキオがルシアナに別れを告げたのは、「新しい結婚相手と浮気した」わけでもなく「ルシアナのことを嫌いになった」わけでもなく、愛しているのはルシアナだけ。
それでも、ルシアナとの別れを選んだのは事情があった。良いように取れば、優しさとか責任感なんだろうけけど、どうしても思えない。一番守りたい人を守れないなんて優しさじゃないと思う。
そんなアザキオの事情を知ることもなく別れを告げられたルシアナ。傷つきながらも自分の足でしっかり前を向いて生きいく彼女とどこまでも甘えたサーシャ(アザキオの新しい結婚相手)の10年の差は大きかった。
愛し合う二人を引き離し、10年間も甘え続けてきた代償をサーシャは今から払っていくんだろうな。子供のためと言いつつも結局は、大人の事情に子供を巻き込んだわけだし(ただし、それぞれの子供はとても良い子!)。
いろいろな感情や背景が複雑に入り混じってる作品で、恋愛ものというよりも人間ドラマのような感じ。一度は離れてしまったアザキオとルシアナが、もう一度向き合って10年の空白を埋めていく過程にも、それぞれの子供視点のエピソードにも、切なくも感動だったので泣きたい日にもう一度読みたいと思う。