これほどまでに美しく歪んだ少年たちを他に知らない「少年の残響」 ネタバレあらすじ&感想

 

登場人物は変声期前の合唱団の少年達とその少年達に関わる大人達。

 

しかし、もう一つの顔は…。

 

神聖で美しい…それでいて残酷。

 

〝歌〟の持つ本当の意味に、少年たちの不安定さや歪さが感じられる作品です。

 

少年たちの純粋さと歪みが描かれているストーリー…

 

何か覗いてはいけないものを見ているような感覚に陥りましたが、美しい世界観に読む手が止められませんでした。

 

これを魅せられるというのかもしれません。

 

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あらすじ

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歌うことは好きだ 綺麗な声を響かせることが出来たら気持ちが良い 。

 

体も 魂も 風も 木も 大地も魂を失くしてすべてが融けていく

 

そうなるともう これまで抱えていた不安も恐れも緊張も嫌な思いは なにもかも みんな忘れてしまうんだ

 

まるで天使のような歌声だと賞賛されている「アウゲンブリック少年合唱団」。

 

元々は孤児院だったという寄宿学校で少年達は勉強と合唱を学んでいる。

 

まだあどけない表情と人々の心を動かす歌声を持つ少年たち。

 

しかし、その少年たちにはもう一つの顔があった。

 

それは――…

 

「お呼びでしょうか 校長」

 

「クリストファー先生 どうですか?子供たちの様子は」

 

「皆よい生徒たちですよ」

 

「それはなにより…さて君を呼んだのは他でもありません 演奏旅行の依頼が来ています 今回は君が指揮をとってください」

 

「……分かりました」

 

校長から演奏旅行の依頼を受けて顔が強張るクリストファー。

 

そう、これが少年たちのもう一つの顔なのだ。

 

演奏旅行という名の仕事――…暗殺。

漠然とした不安…絶望と希望…歪んだ愛。

 

何が哀しいのかも分からないまま、ただ生きていく少年達。

 

救いとも思える〝歌〟のもう一つの意味に、少年達を歪み続ける――…

 

 

ネタバレ感想

ここから先を書くために、先にネタバレをしてしまいますが、歌のもう一つの意味…それは「忘却(洗脳)」です。

 

歌を歌うことで、辛いことや悲しいことをすべて忘れてしまうのです。

 

母親が目の前で殺された時の記憶も、愛した人のことも…。

 

ちなみに、少年達に関わる大人達(先生)も同じ合唱団だったため、ほとんどの記憶がない…ということを先にお伝えしておきます。

 

これが後々にどのようなことになっていくのか…。

 

さて暗殺を日常とし、嫌なことはすべて忘れてしまう…

 

そんな少年達が描かれている「少年の残響」ですが、かなり印象に残るシーンが多いです。(歪んでいたり、切なかったり…)

 

その中から個人的におすすめのシーンを紹介しようと思います。

 

まずは、容姿端麗な「カルル」。

 

彼はその美しい容姿から娼婦として潜入捜査の任務を受けることが多い少年です。

 

男らしくなりたい…強い人間になりたい…けれどこんな見た目でこんな仕事を続けて…自分の気持ちが分からない…。

 

そんなカルルはある潜入捜査で一人の男性に出会います。

 

彼の名はアルフレッド。

 

カルルのターゲットで表向きは貿易会社の監査役ですが、裏の顔は麻薬商人だという疑惑のある男です。

 

カルルの任務はアルフレッドの裏のお金を回収するために隠し場所を聞き出すこと。

 

任務は順調。

 

しかしカルルは娼婦である自分に一向に手を出してこない…むしろ距離を保って話をしてくれるアルフレッドに居心地の良さを感じてしまい始めます。

 

ターゲットと必要以上に親しくなっていはいけない…そんなことは分かっているのに、カルルは不思議な魅力のあるアルフレッドと次第に距離を縮めていってしまうのでした。

 

そして―…

 

嘘を嘘で塗り固め、自分自身をも偽っていたカルルをそれでも愛していると…男だろうと関係ない…葛藤と戦い耐え忍び、それでも気丈に振舞う姿は美しい…そう言ってくれたアルフレッドとついに恋に落ちてしまうカルル。

 

しかし―……。

 

なんだかあらすじのように書いてしまいましたが、その後アルフレッドとカルルは「どこか知らない町で二人で暮らそう」と約束をします。

 

そして、アルフレッドは自分の中である賭けをするのです。

 

それは、ある書類をカルルに渡して銀行に行きお金を引き出すこと。

 

カルルは驚きますが

 

「罪を重ねた自分が銀行へ行くよりも、顔が割れていないカルルが行くほうが安全だから」

 

というアルフレッドの言葉に書類を受け取ります。

 

この書類こそカルルの任務。

 

アルフレッドは気付いていたのです。

 

そしてカルルが自分を選んでくれることを信じたかった…。

 

しかしカルルはその書類を持って寄宿学校へ戻ってしまいます。

 

切ないのはこの後のシーン。

 

外が暗くなるまで待ち合わせの場所でカルルを待ち続けるアルフレッド…そして、シャワーを浴びながら

 

オペラ「私を泣かせてください」を歌うカルル。

歌うことでアルフレッドを忘れようとしたカルルでしたが、アルフレッドのくれた言葉は心の中に。

 

しかし…

 

「見た目なんて関係ない 僕は強い人間だ そう教えてくれた人がいた」

 

「でも」

 

「誰の言葉だったかな」

 

私の文章力では伝わらないかもしれませんが、この話本当に切ないです。

 

他にも、任務中に仲良くしていた先輩を誤って殺してしまった少年と歌(忘却)…

 

その先輩の友人だった少年が亡くなってしまった彼のことを覚えておきたいと願う話…

 

厳しい教師といつも怒られてばかりの少年との歪んだ愛(この話はあまりにも衝撃でした。想像を超えていたので)。

 

そして、元々は少年だったクリストファー先生の苦悩と、彼を見守ることが自分への罪だと考えているニールス先生。

 

さらに、クリストファー先生への想いが恋心なのかを悩むミヒャエル。

 

個人個人の話のようで、うまく話しが絡みあっていて「あー、そういうことだったのか…」と思うと思います。

 

冒頭にも書きましたが、覗いていけない世界を覗いているようなのに何故か読むことが止められないんですよね、この漫画。(引用元:座紀光倫「少年の残響」より)

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