今回の話は電撃を放つ呪いの人形。何度殺されても死なない九朗がいるし、さっさと壊して解決!
と思いきや、そうはいきません。
何故ならその人形には恐ろしいからくりが…。
ハラハラする8巻のあらすじと感想(ネタバレあり)です。
あらすじ
とある海辺の町で起こった怪事件。そこでは異常な数の魚の死骸が上がり…そのすべてが、ショック死をしている状態だという。
原因不明の魚の死因。その様子に猟師達は口々に言う…
「善太さんの祟りじゃないか」
と。
かつて、この町には善太という人物が暮らしていた(すでに亡くなっている)。善太はこの町で生まれ育った人物で、息子は町を出て家庭を持っていた。
その息子が孫を連れて帰省したときのことである。
町に観光に来ていた男女四人の大学生が乗る車に孫が轢かれてしまったのだ。
轢かれた直後はまだ息があったが、観光客の車で混み合い、さらには違法駐車などで救急車での搬送が遅れたことにより、病院に向かう途中で息を引き取ったという。
実は、この事故でこの町の者たちが真っ先に心配したのは、「町のイメージダウン」だった。
そのため、町の者たちは善太やその家族に「事故の件を大事にしないように」と説得したのだという。
もともと、町を汚す観光客たちを良く思っていなかった善太は、このことをきっかけに町に対して相当な恨みを抱いたに違いない。
そう考えた町長は、善太をよく知る人物「多恵さん」に相談をすることにした。
やはり、原因不明の魚の死骸は善太の祟りではないのかと。
しかし、多恵は
「あんな気の小さい男に自分の手で誰かを殺したり不幸にしたりする度胸はなかったはずだ。
ましてや町の行く末に関わる悪を負える強さはなかった。
そんな男が死んだ後とはいえ、自分の生まれ育った町を祟るなどできるはずがない」
と答えるのだった。
「でも、自分の手でやれないなら別のものに代わりにやってもらうならどうです?」
「どういうことだい?」
実は町長には気になっていることがあった。
それは、孫の死後、善太が作っていたという木の人形。
死の間際まで作っていたというその人形…その人形が夜中に道を歩き海の方に行くのを目撃したという情報があったのだ。
「まるで、あの人形が善太さんの念を受けて歩き回ってるみたいでしょう。
このまま、あの人形を問題にしないでおいたら、どうにも取り返しのつかないことになる予感がするんです。」
善太はあの人形で町に報復しようとしているのだろうか―――…
町長と話した後、帰宅した多恵は自身が飼っている化け猫に話しかける。
「…あんた 魚の大量死と善太が作った人形について何か知っているかい?」
「…これはご内密にして頂きたいのですが…今夜あの人形が現れるかと思います」
「人形がひとりでにかい?」
「〝あれ〟は午前一時を過ぎた頃 山から海へ ほとんど同じ時刻同じ道筋を通ってやってきます。
そしてちょうど多恵さんの家の下の砂浜に現れるのです」
実は、あやかしたちもあの人形には困っており、破壊するために今晩対峙するのだという。
その晩――…
化け猫とともに砂浜に訪れた多恵。
しかしそこで目にしたものは信じられない光景だった。
破壊しようと向かってきたあやかしを一瞬にして右手の電撃で倒してしまったのだ。
さらに、あやかしたちの話によるとあの人形は夜な夜な海の中に深く入り、電撃は放ってまわるという。
その衝撃で数多の命が奪われ、海の中はさながら悪夢だというのだ。
「何てことだい。善太は人形にこんな真似を望むくらい この町を恨んでたのかい!?」
あやかしたちでも対抗することができない…もうできる対策なんて…と呟いた多恵に化け猫は言う。
「ご安心を。すでに我々はこのことをある方に相談しております」
そのある方とは――知恵の神「岩永琴子」。
数日後、岩永琴子と九朗が多恵のもとにやってくる。
「あの人形は お孫さんを事故で殺された善太さんがその報復として作った。
あれは善太さんの祟りが形になったものですよね?」
多恵から事情を聞いた岩永琴子は確認するように多恵に問う。
実は琴子はその部分に疑問を抱いていたのだ。
「だとするとおかしくありませんか。事故死したお孫さんの報復なら、あの人形は真っ先にお孫さんを轢き殺した者を殺しに行くんじゃあありませんか?」
その言葉にハッとする多恵。
――ああ、そうだ 善太が祟るのであればあの四人を祟らないわけがない!――
しかし、四人の大学生が変死したという報道はない。
つまり大学生は現在、人形からは何もされていないのだ。
「おかしい 。ならどう考えればいいんだい?」
実はあの人形は近くに人がいても動かなければ攻撃しないという特性がある。
その特性を活かせば、手段を選ばずに破壊することは可能なのだ。
そのことから琴子はこう考えた。
――あの人形は…わざと町の人に壊させるために作ったのだと――…
感想
あらすじにも書きましたが、あの人形は町の人に破壊されることを目的とした呪詛人形なのです。
普通だったらすでに電撃を出せるわけだし、それで殺すつもりではないの?と思いきや、そうではないのです。
もちろん電撃で魚たちを大量死させ町を衰退させることも呪いなのですが、それでは大学生たちに報復ができない。
そこで、あの人形にはあるからくりがしかけてあるのです。
町の人に人形を破壊させることで町の人にも大学生たちにも報復できる…
かなりよくできている話なのでミステリー好きの方にはたまらない作品だと思います。(引用元:原作 城平京 漫画 片瀬茶柴「虚構推理」より)