小畑さんちのブログ

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戦火の中、そこにはたしかに幸せが…「この世界の片隅に」を恋愛漫画としてまとめてみた!

「この世界の片隅に」は戦争をテーマとした漫画で2016年に映画が公開されていますね。

戦争をテーマにしたストーリーと言えば、シリアスで悲しいイメージがありますが、この漫画は戦争という過酷な状況の中にも人々の暮らしがあって、たしかに幸せはそこに存在した…と感じることができます。(もちろん、シリアスなシーンもあるのですが)

さて、そんな戦時中の日常が描かれている「この世界の片隅に」ですが、日常と言えば当然恋愛もあるわけです。

通常の恋愛漫画はセリフからはっきりと心情が分かるんですが、この漫画については読み手によって受け取り方が違ってくるシーンがいくつかあります。

つまり、行動やセリフについてのはっきりとした明言がないということ。

今回はそんな繊細に描かれている恋愛面にスポットをあてて「この世界の片隅に」をまとめました。

登場人物

登場人物が分からないと話が入ってこないと思うので先に紹介します。

本当はもっと登場人物はいますが、今回は恋愛面のみにスポットを当てているので4人のみの紹介です。

北篠すず(旧姓浦野) 周作の妻で本作の主人公。広島市江波で育ち、北篠家に嫁いだのを機に呉に引っ越す。(嫁いだ時の年齢は18歳)絵を描くことが好きで性格はのんびり。

北篠周作 すずの夫。呉鎮守府の軍法会議録事(書記官)で、すずよりも4つ年上。自身の性格が「暗い」ことを気にしている。

白木リン 朝日遊廓「二葉館」の遊女。迷子になったすずと偶然知り合い友達になる。

水原 哲 すずの幼馴染で元ガキ大将。現在は水兵。すずとはお互いに淡い恋心を抱いていた。

周作とすずの最初の出会いは幼少期だった?

ある日、突然父親とともに浦野家にやってきた(すずに結婚を申し込むため)周作。

周作のことを覚えていなかったすずにとっては、突然のできごとなんですが…実は周作とすずは幼少期に出会っています。

それは冒頭のシーン。

両親からおつかいを頼まれて街へ出たすずは、のんびりした性格から人攫いに合ってしまい、カゴに入れられてしまいます。

そのカゴにいた既にいたのが周作なのです。

周作もすずと同じように人攫いに合っていたんですね。(ちなみに漫画を読み進めていくと、この化け物みたいな人攫いがすずの兄だということが判明します)

しまわれていた茶碗――リンと周作の関係

リンと周作の関係は伏線を回収してから書きたいと思います。

①結婚式での周作の様子 すずとの結婚は周作が望んだことのはずでしたよね。それなのに結婚式での周作は俯き、ひざの上でこぶしを握り締めていました。また、すずのセリフから食事をしなかったことが分かります。

②周作のセリフ 「過ぎた事 選ばんかった道 みな 覚めた夢と変わりやせんな すずさん あんたを選らんだんは わしにとって多分最良の現実じゃ」

③リンが持っていた自分の名前が書かれた紙 リンは家が貧しかったため字を読むことができません。そんなリンのために「いいお客さん」が書いてくれたものです。

④叔母さんのセリフ 「好き嫌いと合う合わんは別じゃけえね 一時の迷いで変な子に決めんでほんま良かった」

以上の伏線の後、すずは気付いてしまいます…周作とリンがただならぬ関係だったことを。

そして、見てしまうんですよね…周作のノートのある一ページの一部分が切り取られていることを。

ここから憶測になるんですが、周作が結婚したかった相手は本当はリンだったのだけど、家族や親戚に猛反対されたのだと思います。(結婚した日の「急いで済まんかった」という周作のセリフからも、リンを諦めさせるために別の人との結婚を家族から急かされていたことが読み取れます)リンは遊女ですからね…。

つまり、周作が結婚式で拳を握っていたのは緊張していたからなのではなく、すずとの結婚に納得していなかったということでしょう。

では、すずに結婚を申し込んだ理由は何だったのか…多分、断られることを期待していたのではないかと思います。

すずと周作が出会ったのは幼少期ですし、当然すずが覚えているわけもない。

そして遠方だから嫁いでくれるはずがない…そう期待していたのだと思います。

もし、期待通りにすずが断ってくれたら急かしていた家族も納得せざる負えないですし、リンとの結婚にも可能性が出てくるわけですから。

さて、こうして周作とリンの関係に気付いてしまった「すず」ですが、リンの方も茶碗の一件で「すず」が気付いたことに気付いてしまいます。

それが分かるのが

「ねぇ すずさん 人が死んだら記憶も消えて無(の)うなる 秘密はなかったことになる それはそれでゼイタクな事かも知れんよ」

というセリフ。これは「秘密は死ぬまで互いの心の内に」ということだと思います。

つまり、気づいたことを周作に言うなってことですね。

このシーンが凄いのは、周作の話が一切出てきていないこと。

そして、その後に周作もすずがリンの存在に気付いていることを知るんですが(物語の後半)、3人の口からはリンと周作の関係について何も語られていないのです。

それなのに、周作とリンの関係は物語上にはっきりと浮かんでくるんですよね…。この漫画、本当にすごいと思います。

鍵を閉めた理由――すずと哲の関係

物語の中盤くらいに、すずの元を水兵になった哲が訪れます。

そして一晩、北條家に泊まることになるんですが…周作は納屋に泊めた哲のもとへすずを行かせるのです。

その理由は行火を持っていかせるため。

しかし、周作はすずが玄関を出るとすぐに鍵を閉めてしまいます。

それは一晩一緒に過ごしなさい、何が起きても構わないと言っているのと同じですよね。

では何故、周作は鍵を閉めたのか…。

これは憶測ですが、周作と哲の立場にあると思います。

この時代は戦争に行っている人の方が偉いとされていました。

そこでもう一度、登場人物を読んでみてください。

かたや安全な書記官、かたや命を張っている水兵…つまり周作は自分の立場は下で、水兵にはそこまでする必要があると思ったのではないでしょうか。

では、それが何故すずだったのか…当然、周作は気づいてしまったのでしょう…哲の気持ちに。

そしてすずの気持ちにも。(すずの気持ちについては後に気づいていることが分かります)

しかし、哲に抱きしめられた「すず」は「うちはずっとこういう日を待ちよった気がする…」と言いつつも「うちは今あの人にハラが立って仕方がない!ごめん、ほんまにごめん!」と断ります。

この「あの人」というのは周作を指し「ハラが立つ」というのは、きっと「すずと哲が体の関係を持っても構わない」と取れる行動をしたことに対してだと思います。

最初は何となく結婚した相手(周作)でしたが、日々を一緒に過ごすうちに愛していたのですね。(引用元:こうの史代「この世界の片隅に」より)

まとめ

今回は恋愛面について書きましたが、日常面においてもユーモアがたくさん溢れていて、とても魅力的な漫画だと思います。

もちろん人が亡くなったり、すずの右手がなくなったり…そしてすずの実家の広島のこと…シリアスなシーンもあるんですが、冒頭にも書いたように「幸せは確かに存在した」ことが伝わってくる作品です。

個人的な意見ですが、この漫画は「受け継がれていくべき作品」だと思います。

人生において、この漫画に出会えたことを幸せに思う…そこまで思わせてくれる素晴らしい作品だと思います。

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この世界の片隅に 上

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