仲間が消えたあの日――あの時食べたものは本当に魔物の肉だったのだろうか…。
今回はセンシの悲しい過去が明らかになります。
そんな7巻のあらすじと感想を書いていきますね(ネタバレあり)
あらすじ
食事をしていると、突然何かを目で追い始めるイヅツミ。
そんなイヅツミを見てチルチャックは苦言を呈します。
「………イヅツミ。お前そのちょくちょく何もない所を目で追うのやめろ。何か見えてんのか?」
「いや別に。なんか気配を感じた気がしただけ」
その返事に「余計恐いわ…」と顔を歪めるチルチャック。
するとその話を聞いていたライオスが突然叫び出します。
「え!?まさか…ひょっとしてこれは幻覚じゃない………!?」
「は?」
頭の病気だとチルチャックに脅されていたため、皆には言えないでいましたが、実はライオスは魔力酔いした時の幻聴と幻覚が今も続いているというのです。
「どんな幻覚なんだ」
「いや、それが四六時中誰かが話しかけてきて…最初は何を言ってるかわからなくて、でも段々声も形もはっきりしてきて…怖いからずっと見えないふりをしていたんだが」
すると…
「やっぱお前聞こえてたんじゃねーか」
と無視され続けてきたことに腹を立てている霊の声が(ライオスにしか聞こえない)。
こうして、幻聴でも幻覚でもなかったことが分かったライオスはさっそく幽霊に用件を伺います。
「なんか紹介したい人がいるって!」
「んー……」
「まあ……他にアテもないし」
「よし、じゃあその人に会わせて……」
とライオスが答えた瞬間、無数の手が伸びてきて――…!!
辿りついた場所は魔物と人が共存する黄金郷。
そこでライオスたちはある人物に出会います。
それは…デルガルの孫「ヤアド」。
彼がライオスたちを黄金郷へと呼び寄せたのです。
その理由は――狂乱の魔術師にかけられた不老不死の呪縛。
食欲を感じることもなく、ただ生きているだけの苦痛。今まで多くの者が呪縛から逃れようと村を出ていきましたが、成功した者はおらず肉体を失ってしまうだけだったとヤアドは言います。
「そ…それで私たちがここへ招かれた理由は………?」
「予言です」
「よ…予言?」
「〝その者は翼を持つ剣をたずさえ〟〝狂乱の魔術師を打ち倒し我々を解放するだろう〟と」
そしてヤアドはこう続けます。
「〝翼持つ剣をたずさえた者 狂乱の魔術師を打ち倒し この国の新しい王になるであろう〟」
それを聞き、「人違いだ」「この剣は偶然拾った物だ」と叫ぶマルシルとチルチャック。
しかし、ヤアドはこれは偶然ではないとライオスの手をとり…
「約束していただけませんか。狂乱の魔術師を打ち倒し 我々を解放してくださると………!」
しかし、ライオスはあることを問うて――…。
翌日になり、迷宮に戻ったライオスたち。
転移酔いをしてしまったセンシとずっと様子がおかしかったイズツミ、そしてチルチャックを残し、ライオスとマルシルは周辺の様子を見に行くのでした。
その後…
「大変 大っ変!!ファリンを見つけたかも」
戻ってくるなり、興奮した様子で話すマルシル。
どうやらファリンらしき魔物と遭遇したというのです。
しかしライオスは…
「俺はグリフィンか何かじゃないかと……」
「……!?」
グリフィンと聞き突然青ざめるセンシ
。ファリンらしき魔物を追おうと皆に呼びかけるマルシルに断固として反対します。
しかし、そこにグリフィンが現れて―――!!
「ぬおおおおおおおお」
「センシ―――っ」
感想
さて冒頭でも書いたように今回はセンシの過去について描かれています。
私は忘れていましたが、ライオスたちに出会ったときに「10年以上この迷宮で魔物食を研究している」と言ってたんですね。
でも迷宮が発見されたのは6年前。
一体どういうことなのか…。その過去は今回センシが異常なまでに見せたグリフィンへの恐怖心にも繋がるものでした。
実はセンシは元々は坑夫団の一員。
とは言っても目的は鉱石ではなく、戦争前の遺跡を探して一攫千金を夢見ていたのです。
そんなある日、仲間たちと見つけたのが黄金に輝く古代の城…そうこの迷宮。
怖くなったセンシは、一度地上へ戻って準備をした方がいいでのは…と仲間に言いますが、吸い寄せられるように仲間たちは迷宮へと入って行ってしまうのでした。
ひとりにされるのも怖かったセンシは仲間達について行くことにしますが、そこで異変が起きてしまいます。
それはまさかの魔物。
仲間が一人減り、二人減り…。帰り道も分からず食料もない。
一番年下だったセンシは足手まといだと(本当は守られていた)食料を一緒に探しにいくことを認められず、迷宮内の地図をまとめることを言いつけられます。
そんなある日…悲劇が起こってしまいます。
残されたセンシ以外の二人の仲間「ギリン」と「ブリガン」がセンシを巡って喧嘩を始めてしまったのです。
外へ出て話すことにしたギリンとブリガン。
すると、センシの耳に激しくなる怒鳴り声と大きく争う物音…そして悲鳴が。
悲鳴が途絶え、恐ろしいほど静かになった部屋。
そこに戻ってきたのはギリンただ一人でした。ギリンはグリフィンが現れてブリガンが殺されたとセンシに告げます。
そして倒したグリフィンを一緒に食べようと…。
その後、ギリンも魔物に殺されてしまうのですが、センシがグリフィンから逃げるのは真実を知りたくないから。
食べてしまったら、あのときの肉が本当にグリフィンだったのか…それとも……がはっきり分かってしまうから。
そんな過去を聞いたのに「よしグリフィンを食べてみよう」とあっけらかんと言うライオスはさすがだなと思います笑
普通は食べないでおこうとなるはずですよね。
さて、グリフィンを食べたセンシ…その味はあの時の味とは似ても似つかないもので…。(引用元:九井諒子「ダンジョン飯」より)